「これから自分の身に何が起きても動じない気がする。」
これは、僕が20代前半に、ひとり旅から凱旋帰国した際、両親に放った言葉。
きっと、達成感からくる自信に舞い上がっていたのでしょう。
それは、もう、楽しかったですから。
またあの状況や環境を、取り戻したくて、取り戻したくて、たまらなくなります。無理だと分かっていても…。
そんな思いで書いています。
「ツアー旅行ではなく、海外ひとり旅。でも、どうしようか迷ってる。」という若い人に届き、励みになれば嬉しいです。
海外旅行とは、異なる文化に触れるために、実際に行く。という事。

僕にとって、ひとり旅は自分をモチベートする手段。人生に新たな視点を与えてくれる。旅から得る生の体験は計り知れない。
たとえば、
「へぇ〜!フランスでは、電車の中で赤の他人とペチャクチャ喋るんだ!」その靴下イケてるね。を皮切りに会話が始まった。他人に対して心の扉を開いてる人を見て、真似したいな。とか。
「おぉ!イタリアでは、警察なのに両腕にタトゥーがびっしり入ってる!しかもデザインは裸の女性。」そうだよな、人生は短いし、人目を気にする必要ないよな。とか。
「うわ!ポルトガルでは、犬の糞がてんてんと落ちている…。飼い主は回収しないのか?」ここではキチンとしたマダムの吸い殻までも宙を舞う。日本の街の地面が、いかにキレイか分かった。とか。
「日本のテクノロジーや国民性は、世界からリスペクトされている。」というのは大きな勘違いで、実際は、エロサイトでマスターベーションばっかりしている黄色人種。しかも、何考えているか分からないから気持ち悪い。と思われてるのも事実。とか。(バレてる苦笑)
というように、旅はそういった事を、教えてくれるので面白い。

結論から言うと、感動が薄れつつある冷静な30代の今より、偏見のない20代の頃にした旅の方が心が踊っていた。まるで、心に宿る活発な少年をそのまま解放できてるようで。
若さは武器。精神的にも純粋なため、吸収率も抜群。しかも、新しい事を求めて前に進む。血気盛んな時期に「どこも混んでるから出かけない。」と、年配者のようなセリフを言う若者は少ない。
ほとんどの人は歳をとると、想像以上に保守的になってしまう。新しいことを始めようとしても、脳はやったことのある事を好むため、「やらない理由」がスラスラと出てきます。若い頃には後先考えずに、パッと実行できた筈のに…(どう?歳をとるって、つまらないでしょう?)
それに、若い人は助けてもらえる。未熟に見える旅人を応援したくなるのは、どこの国も同じ。話しかければ、「どうしたんだい?」と、必ず手を貸してくれる。だから心配しなくて平気です。
僕も若さを武器に、旅先では他人の足を止めさせ、遠慮なしに頼りまくってました。「誰かに聞けばいいや。何とかなるさ。」と常々思っていたし。(正直、今でも)
ところが、中年になると、できて当たり前の領域が増えるため、差し伸べてくれる手が少ないのは、仕方がない事です。
若い人は、旅の最中、友達も簡単に出来ます。「この人面白そうださな、気が合いそうだ。」と思えば、きっとむこうも「この日本人と話してみたいな。」と感じている。勇気を持って話しかければ、すぐに仲良くなれる。(中年になるとなかなか難しい)
旅人にはオープンマインドの人が多く、物質的な豊かさとは違う豊かさを見ている。特に、東南アジアで見かけるバックパッカーのフレンドリーっぷりは顕著で、「やぁ、君、どこから来たの?」というように好奇心に溢れており、友達作りには事欠きません。

旅には、そういった波長の合いそうな人が集まる力がある。
ひとり旅は、「学び」という部分でも、人生に寄与してくれます。意思決定の数だけ成長し、引っ込み思案は損をすることを痛感させられる。
世界の商人たちは、日本人の「NO」と断れない習性を知っており、よく騙されそうになるし、旅先で出会った外国人は、若いのにハッキリしてるなと気づかされることが多くあります。
相手の顔色を伺うコミュニケーションより、ハッキリと意思表示をした方が、信頼に繋がることに気づきます。「同調することが良い」とされてきた日本的思考に、疑問をもつキッカケにもなります。そういった原体験が、どんどん成長させてくれる。
手っ取り早く。
というように、昔から言われる「可愛い子には旅をさせよ。」というのは、「多感な時期に、さっさと能動的に学んでおいで。」という事なんですね。
とは言っても、「いきなりひとり旅はハードルが高い。」という方は、気心の知れた友人と行ってみてはどうでしょうか。さらけだせる間柄の人物との旅は、幸福な時間が約束されています。きっと起こってしまう小さなケンカだって、相手の新たな一面を知る良いキッカケにもなります。
それに、最初から無理にひとり旅をする必要もありません。
実は、僕も最初からひとり旅をしたわけではありませんでした。
大学生の頃、仲の良かった友人が、放浪から帰って来るやいなや、
「インドで、サドゥ(苦行僧)に出会って、名前を貰ったわ。人生観変わった。」
「なにそれ美味しいの?俺も海外旅行に連れてけよ!でもインドは嫌だ。タイが良い。」
「あぁ、いいぜ。タイはめちゃくちゃ楽しいから、きっと気に入ると思う。面白い島を紹介する。俺についてこい。」
それが、バックパッカーの始まりでした。
そして彼の予想通り、僕は旅にハマった。
帰国後、気の合う仲間たちに旅の素晴らしさを説明し、東南アジアへ何度も繰り出しました。タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、マレーシア、中国、韓国。お金のない学生のお決まりの渡航先です。
ある時、タイに連れて行ってくれた友人が言いました。
「そろそろ、ひとり旅もいいのでは?」
寂しがり屋だった僕は「旅とは、誰かと行って、思い出を共有するもの!」と、固定的に言い聞かせ、バカになれる人選をし、愉快な旅をしていた。実は、単独の旅はどこか怖くて、避けていた。(超ダセーな)
彼の助言通り、「ひとり旅か、そろそろやってみるか。早い方が良いよな。」と、行動に移しました。
30万ほど貯めて、とりあえず、タイ南東にある「ある島」に向かいました。意外と一人は気楽でしたが、やはり心細さは完全には消えず、弱点を見つめる良い機会になりました。
社交的だったと自負していた自分の中に、気にしないようにしていたシャイな自分がしっかりと表面化します。もっと自分の事を伝えたいと思い、ビーチで英語の勉強をしたりしました。そうやって嫌でも成長します。
案の定、色々な出会いもありました。
行動的なベルギー人の女の子に「旅限定の彼女にして」と言われ、一緒にベトナムやカンボジアの世界遺産を楽しみました。からかうと、思いっきり殴ってくる少しだけ気性の荒い彼女が、アンコールワットで「たのしい、一生帰りたくないわ。」と、はしゃいでる姿はキュートだった。
同世代で、感性と背格好まで近い日本人と出会い、「今から荷物をまとめて一緒に行動しよう」と、一緒にタイの島巡りをしたりしました。バイクで徘徊中、「なにこの道?」「とりあえず行ってみよう!」と、進んだ先には、秘境みたいなビーチがあった。誰もいないその海でカヤックとシュノーケルで遊んだ。まるで本当の兄弟みたいに。いまだにあのビーチがどこに在ったのか分からない。

運良く波長の合う人と出会い、一緒に旅をする。なんて事も普通に生活していたらあり得ない。それに、よく知らない相手を無条件に受けいれる姿勢も、若さゆえ。
とにかく楽しかった…。マジで楽しかった。(当時の懐かしい曲を聴きながら写真を見ていると、涙が出そうにる)
東南アジアの旅は、ヨーロッパとは違って「冒険」のような要素がある。熱帯雨林の悪路をバイクで走ったり、レアな野外パーティに遭遇したり、トラックの荷台に立って風を感じながらの移動。それぞれのシーンで、なんとも言えないあの感覚、「青春」に包まれた。
旅先でも、インターネット上でも、面白い日本人バックパッカーは沢山いますが、いざ社会に出ても、そういった経験をしてる人との出会いは少ない。制限時間付きの時期に、旅を経験をすることができた自分はラッキーな方だと思っています。
とまぁ、僕の旅の話はここまで。(おじさんの自慢話になったら悲しいし)
せっかくなので、初心者にオススメしているルートを紹介します。

それは、タイにある「サムイ島・パンガン島・タオ島」の3島です。しかも、この3島で1つのパッケージ。1つでも欠けたら勿体無いです。
王道ルートですが、ハードルが低く、コスパが良くて、タイ人はいつも笑顔で優しい。それにカオパットというタイチャーハンは驚くほど旨い。
島のサイズはそれぞれ異なりますが、どれも比較的コンパクトな類に入り、バイクを借りると島での生活は何倍も楽しくなります。
バンコクからの移動は半日以上かかるので、日本から直接サムイ島へ向かうと貴重な時間の短縮になります。直行便はないので、乗り継ぎが1回はあります。旅行期間はトータル1週間。出来れば2週間あると最高です。
ご存知の通り「南の島」はゆったりとした時間が流れており、誰も急いでない。夕日は、嫌なことを全部、浄化してくれる。「そんなちっぽけな事は誰も覚えてないよ。忘れちまえ。」と言われているようで。
去年、友人にこの3島のルートを紹介したところ、「人生で、もっとも楽しい時間を過ごせた、あれは、冒険だ。10年前に旅の面白さを教えて欲しかった。」と、喜ばしい返事をもらいました。(当時、誘ったけど)
サムイ・パンガン・タオ。各島の遊び方は異なりますが、ここはひとつ、自分で調べてみてください。調べた時から旅は始まります。島の名前をグーグルで画像検索してみると、綺麗な海が画面いっぱいに広がり、気分が高まります。

「物事を始めることに、遅いことはない。」と聞きますが、それは、高齢や腰の重たい人に向けた「かろうじてチャンスが残ってる。」といった慰めの言葉です。もちろん年を取ってからも、新しいことを始めることは大事ですが、手をつけるのは何でも、早ければ早い方が良い。
とにかく脳が新鮮で、小さなことにもイチイチ感動できてしまう時期に、海外旅行という荒野を逃すことは大きな機会損失。自己啓発本を何十冊読むより「1回のひとり旅」から得る恩恵は大きい。ということを、おじさんになった今、伝えたい。
限界を決めていない状態は、アレコレ考えずに、思い切った行動ができる。仕事がとか、時間とか、語学とか、リスクとか、そういったの全部忘れて、全精力で楽しんで欲しい。映画GOの中で、窪塚が扮する鈴原という青年のセリフを借りれば「広い世界を見るのだ!」です。
僕はいつも、さっさと、日程を抑えて、エクスペディアか何かで航空券を、勢いに任せて購入します。宿はBooking.comか、Airbnbか何かで。南の島に行くのであれば、バンガローを抑えれば完了。(ホテルじゃないですよ、バンガローです)個人的には、海沿いのボロいバンガローの方が、愉快なやつらが集まっていて楽しい記憶があります。
最後になりますが、僕は若者が羨ましい。彼らこそ時代の最先端。Twitterを見ると、10代や20代の若い人たちが、新しい時代をオリジナルの方法でバッサバッサと切り開いている。
プロフィールを見れば、思わず躊躇してしまう聡明な肩書きの人や、ひたすら同じ制作物を実直に作り続け配信しているクリエイティブな人たち。
能動的な彼らから学ぶことは非常に多く、「確かにな」と思うことは積極的に盗んでる。なにより同調圧力に負けずに自由を求める姿が、尊い。そこでいつも思うのは、
歳だけはとりたくない。